TCFD/TNFD

TCFD提言への対応

アルプスアルパインは、気候変動及び生物多様性を含む自然資本の変化が、事業活動及び中長期的な企業価値に影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しています。事業活動は、エネルギー、原材料、水といった自然資本に依存すると同時に、温室効果ガス排出や資源利用などを通じて環境に影響を与えています。この認識の下、当社はTCFD及びTNFDの枠組みを活用し、リスクと機会を体系的に把握・評価するとともに、環境戦略に反映することで、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

ガバナンス(TCFD/TNFD共通)

当社は、気候変動及び自然関連課題を含むサステナビリティ課題について、取締役会の監督の下、実効性のあるガバナンス体制を構築しています。CEOはサステナビリティに関する最高責任者として全体を統括し、CEOが任命した取締役がサステナビリティ委員長として、TCFD・TNFDを含むサステナビリティ施策全般を監督しています。
2025年度からは、執行役員会に相当するサステナビリティ委員会を運営し、経営としての判断を行っています。また、ESG・法務本部配下の環境戦略推進プロジェクトが、関係部門と連携しながら気候関連及び自然関連課題に関する施策の推進及び進捗管理を行っています。サステナビリティ委員会では、気候関連及び自然関連課題に関する方針・施策、関連KPIの進捗状況並びにリスクと機会の評価結果について審議しています。
また、取り組みの実効性を高めるため、ESG評価指標を役員報酬に反映し、経営層自らが責任を持って課題に取り組む仕組みを導入しています。サステナビリティ委員会で審議された内容は、四半期ごとに取締役会へ報告され、取締役会は進捗及び顕在化する課題を継続的に監督しています。
さらに、気候関連及び自然関連課題への対応にあたっては、人権方針に基づき、地域社会や事業活動の影響を受けるステークホルダーを含む関係者の人権を尊重することを基本原則としています。

サステナビリティ委員会
開催時期
経営課題ディスカッションテーマ
2025年7月
  • エコロジカルフットプリント算定結果報告
  • 環境関連プロジェクト設置答申
2025年10月
  • 国内拠点の電力再エネ化について
  • 環境戦略推進プロジェクト設置答申
2026年1月
  • 環境戦略推進プロジェクト計画について

<推進体制>

リスクマネジメント(TCFD/TNFD共通)

当社は、気候変動及び自然関連リスクを特別なリスクとして切り離すことなく、全社的なリスクマネジメントの枠組みに統合しています。TCFD及びTNFDの考え方に基づき、物理リスク及び移行リスクを含むリスクと機会を識別・評価し、他の経営リスクと同一基準で整理しています。気候関連リスクについては気候シナリオ等の外部情報を活用し、自然関連リスクについては自然への依存及びインパクトを考慮の上、バリューチェーン全体を対象として評価しています。これらのリスクと機会の識別・評価は、環境戦略推進プロジェクトが関係部門と連携して実施し、その結果を全社リスクマップへ反映しています。
影響度が大きいと判断されたリスクについては、サステナビリティ委員会で対応方針を検討した上で取締役会に報告し、必要に応じて審議を行います。また、対応施策の進捗状況についても定期的にモニタリングしています。これらのプロセスを通じて、事業への影響を可視化し、中長期的な企業価値の維持・向上につなげています。

戦略:TCFD(気候変動)

TCFD提言に基づき、IPCC等が示す複数の気候シナリオを参照し、将来の不確実性を考慮したシナリオ分析を実施しています。分析においては、脱炭素化が進展する社会及び気候変動影響が顕在化する社会を想定し、時間軸の観点から、事業への影響を整理しています。
また、2025年度にはマテリアリティの見直しを行い、「脱炭素社会の実現」から「気候変動への適応と緩和」へ重点を変更しました。これは、一定程度の気温上昇が今後も見込まれる中、当社事業において気候変動への適応がリスク及び機会の両面で重要であると評価したためです。当社は、気候変動による影響を軽減するための緩和策とともに、変化する気候条件や社会環境への適応を進めることで、事業の持続性と競争力の確保を目指しています。

<リスクと機会の分析条件>

対象範囲 電子デバイス事業、モビリティ事業
シナリオ IPCC AR6 WG1より示される5つのシナリオから3つを選択
SSP5-8.5(ワーストケース), SSP2-4.5(現状ライン)、SSP1-1.9(ベストケース)
時間軸 短期:1年、中期:2-3年、長期:3年以上
影響度 小:売上0.5%~、中:売上3%~、大:売上10%~

<シナリオ定義>

気候変動が事業に与える影響を把握するため、「気候変動の進行度(物理リスク)」と「規制強化度(移行リスク)」を軸とした4つのシナリオを設定しています。各シナリオのもとで、電子部品事業及び車載製品事業におけるリスクと機会を評価し、気候変動が事業に与える影響を分析しています。

<リスクと機会の評価>

定義したシナリオを基に、当社主要事業における気候関連リスクおよび機会を評価しました。

リスク評価

区分 種別 項目 具体的な影響 時間軸 影響度 主な対応策
移行リスク 政策・規制 カーボンプライシング制度の加速 カーボンプライシング制度導入国増加、価格高騰に伴いコスト負担が増加する 長期 小
  • 直接排出量削減によるコスト増加リスクの低減
  • インターナルカーボンプライシング制度導入による事業ポートフォリオ評価への組み込み
政策・規制 省エネ・GHG排出量規制の強化
  • 報告対象拡大による管理工数の増加
  • 省エネ基準評価による設備更新前倒し
  • 上流サプライヤー含む製品カーボンフットプリント算定要求の拡大による管理工数の増加
長期 小
  • 計画的な設備更新による規制強化への先行対応
  • サプライヤー含む社内データ管理基盤の整備による管理工数増大への対応
市場 低炭素製品需要の拡大
  • 顧客ニーズに対応できないことによる売上減少
  • 低炭素部材への切り替えに伴う調達コスト増加と価格転嫁できないことによる利益率の圧迫
長期 中
  • 低炭素製品・技術開発の強化による需要対応力の向上
  • サプライヤーとの協働や複数調達先の検討によるコスト上昇の抑制と安定調達の確保
市場 鉱物資源の需要逼迫
  • 調達コストの上昇・価格変動リスクの増大
  • 供給不安によるサプライチェーン途絶
中期 中
  • 代替材料の検討や使用量削減の検討
  • 調達リスク分散によるコスト・価格変動リスクへの対応
市場 電力需要の拡大
  • 電力料金の上昇リスク増大
  • 再エネ・脱炭素電源調達の負担増
中期 小
  • 省エネ推進による電力需要・料金上昇リスクの抑制
  • 電力調達方法の多様化によるリスク分散
物理リスク 急性 洪水・サイクロン・ハリケーン・台風
  • 工場の操業停止
  • サプライチェーン寸断
  • 設備・在庫の破損
中期 小
  • 定量的リスク評価に基づく防災・減災対策の優先実施
  • 定量的リスク評価に基づくサプライチェーンリスクの可視化
慢性 気温上昇
  • 従業員の健康悪化による労働生産性の低下
  • 空調コスト・エネルギーコストの増大
長期 小
  • 定量的な熱中症リスク評価に基づく職場環境・健康対策の強化
  • 高温環境を考慮した設備・建屋対策によるエネルギー負荷抑制
  • リスク評価を踏まえた中長期的な拠点運営・投資計画への反映

機会評価

種別 項目 具体的な影響 時間軸 影響度 主な対応策
市場 防災・適応市場の成長に伴うコンポーネント事業製品の売上増加 防災・減災向けコンポーネント需要の拡大が見込まれる 長期 小
  • 防災・減災市場の成長を中長期的な事業機会と捉え、研究開発・投資・新規事業開発の検討に反映し、気候変動への適応を通じた持続的な事業成長につなげる
市場 水資源・農業向けIoT需要の増加 干ばつ、渇水、高温など農業リスクが増大しており、水・農業分野での適応ニーズが増大し、センサー・通信デバイス需要の拡大が見込まれる 長期 小
  • 干ばつや渇水、高温環境下での水管理・農業生産を支援する用途を想定し、環境データ取得や遠隔監視に適したセンサー・通信デバイスの開発・機能強化を進め、適応ニーズにこたえる製品提供を強化する

戦略:TNFD(自然資本)

TNFDが推奨するLEAPアプローチに基づき、事業活動と自然との依存および影響を踏まえたシナリオ分析を実施しました。生態系サービスの劣化と市場要因及び非市場要因の変化を不確実性として設定し、複数の将来シナリオにおける自然関連リスクおよび機会を評価しています。
本分析結果は、対象事業、時間軸、影響度の観点から整理し、事業戦略および優先施策の検討に活用しています。

<リスクと機会の分析条件>

対象範囲 電子デバイス事業、モビリティ事業
シナリオ 生態系サービスの劣化度合い(物理リスク)と、市場力および非市場力(移行リスク)の一貫性を軸とした複数の将来シナリオ
時間軸 短期:1年、中期:2-3年、長期:3年以上
影響度 小:売上0.5%~、中:売上3%~、大:売上10%~

ENCOREを用いた事業活動に伴う依存とインパクト分析

TNFDが使用するLEAPアプローチの初期段階として、ENCOREを活用し、事業別に自然への依存および影響の特定を行いました。その結果、特に上流において、大気、土壌および水質汚染物質の排出に起因する自然への影響が相対的に大きいことが確認されました。一方で、その他の生態系サービスに関しては、事業全体として特段顕著な依存や影響は確認されませんでした。

<ヒートマップ(依存)>

※VL:Very Low、L:Low、M:Medium

<ヒートマップ(影響)>

※L:Low、M:Medium、H:High、VH:Very High

WWF Biodiversity Risk Filterによる拠点別生物多様性リスク分析

生産拠点における生物多様性関連リスクの把握を目的として、WWF Biodiversity Risk Filterを用いた分析を実施しました。本分析では、物理リスクおよび評判リスクを中心に、地域特性を踏まえた相対的なリスクレベルを整理しています。その結果、物理リスクについては、メキシコ工場において平均値が相対的に高いことが確認されました。
一方、評判リスクについては、日本国内の2工場が国際的に注目される自然環境周辺に立地していることから、相対的に高い評価結果となりました。

<物理リスク>

<評価リスク>

<シナリオ定義>

自然関連リスクおよび機会が事業活動に与える影響を将来不確実性の下で評価するために、4象限のシナリオ分析を実施しました。本シナリオは、縦軸に生態系サービスの劣化の度合い、横軸に市場力と非市場力の一貫性を設定し、将来の事業活動に与えるリスクと機会を整理したものです。これらのシナリオ定義を基に、各将来像の下で想定される自然関連リスクおよび機会を評価し、事業戦略や施策の検討に活用しています。

<リスクと機会の評価>

定義したシナリオを基に、当社主要事業における自然関連リスクおよび機会を評価しました。

リスク評価

区分 種別 項目 具体的な影響 時間軸 影響度 主な対応策
移行リスク 政策・規制 有害化学物質使用規制の更なる強化
  • REACH, RoHSをはじめとする各国の化学物質規制範囲が拡大・頻発し、管理工数が増加
  • 代替部材への変更による費用増
中期 小
  • 各国の中長期規制動向モニタリング体制整備
  • 代替材料の計画的導入
政策・規制 廃棄物排出に関する規制強化
  • 埋立処理の制限強化による廃棄コストの上昇
  • 有害廃棄物の取り扱い厳格化による管理コスト増加
長期 小
  • 廃棄物発生量削減と分別高度化
  • 埋立処理低減と再資源化推進
  • 有害廃棄物管理体制の強化
市場 環境配慮製品需要の拡大
  • 既存製品の市場価値低下
  • 急速な市場シフトに伴う研究開発費増加
長期 大
  • 環境配慮製品へのポートフォリオ転換を検討
  • 顧客ニーズ先取による要素技術開発強化
市場 顧客の調達基準・取引条件の厳格化
  • 調達基準未達成による受注機会の喪失
  • 環境負荷データの開示義務化による対応負担の増加
長期 中
  • 顧客との早期対話による要求の先取り
  • 環境負荷データ収集・開示体制の整備
技術 代替え材料・リサイクル材への製造技術対応遅れ
  • 材料置換に伴う品質・信頼性トラブルによる納入遅延、歩留り低下
長期 中
  • 代替材料対応の製造技術・評価基盤強化
  • 試作・量産前検証による品質リスク低減
物理リスク 急性 洪水被害の増大
  • 工場の操業停止
  • サプライチェーン寸断
  • 設備・在庫の破損
中期 小
  • 定量的リスク評価に基づく防災・減災対策の優先実施
  • 定量的リスク評価に基づくサプライチェーンリスクの可視化
慢性 水ストレス
  • 工場の操業停止
  • 水使用コストの急増
長期 小
  • 水使用量削減と再利用推進
  • 水リスクを踏まえた操業計画の検討

機会評価

種別 項目 具体的な影響 時間軸 影響度 主な対応策
技術 資源効率の改善
  • 原材料使用量の削減に伴う調達コスト削減
  • 廃棄物処理費の削減
長期 小
  • 製品・工程設計見直しによる原材料削減
  • 歩留り改善と端材等の有効活用
  • 再利用・再資源化促進による廃棄物削減

指標と目標

TCFD(気候変動)

当社は、2050年度に向けた目標としてバリューチェーン全体のGHG排出実質ゼロを掲げています。また、2030年度に向けた中期目標を定めており、SBT認定を取得しています。

GHG排出削減目標

目標年度 目標
2050年度 バリューチェーン全体のGHG排出実質ゼロ
2040年度 スコープ1+2排出実質ゼロ
スコープ3 50%削減 (2021年度基準)
2030年度 スコープ1+2 90%削減 (2021年度基準) SBT認定
スコープ3 カテゴリ1,4,11で25%削減 (2021年度基準) SBT認定

TNFD(自然資本)

当社は、事業活動が自然資本に依存し、また自然環境及び生態系に影響を与えることが、中長期的な事業リスクおよび機会につながるとの認識のもと、自然関連リスクの管理を進めています。この認識のもと、廃棄物、水資源、化学物質及び大気汚染物質を主要な管理テーマとして特定し、関連する測定指標に基づくモニタリングを実施しています。
また、当社は、2050年度に向けた長期目標として、「枯渇資源バージン材使用ゼロ」、「廃棄物最終埋立てゼロ」、「環境・生態系にとって有害な物質排出ゼロ」を掲げています。これらの達成に向け、廃棄物および水使用量の削減、化学物質事故の未然防止等を中核とした測定指標およびターゲットを段階的に設定しており、2050年度目標との整合を踏まえた測定指標の追加ならびに具体的な中短期目標については、2026年度に策定する予定です。

指標 長期目標
(2050年度)
中期目標
(2030年度)
短期目標
(2026年度)
実績
(2025年度)
枯渇資源バージン材使用 実質ゼロ (策定予定) (策定予定) ー
廃棄物最終埋立て 実質ゼロ (策定予定) 4% 4%
廃棄物リサイクル率 (策定予定) (策定予定) 96% 96%
取水量の削減 2027年度までに
1.5%削減
(2024年度比)
0.7%削減
製品含有規制物質の重大事故件数 0件 0件 0件 1件
事業所関連化学物質起因重大事故件数 0件 0件 0件 0件
GHG以外の大気汚染物質量 実質ゼロ ー ー ー