TCFD提言に基づく情報開示
TCFD提言への対応
当社は、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。気候変動関連リスクと機会の分析を行い、その結果を事業戦略につなげることで持続可能な成長及びリスクへの適切な対応を目指していきます。

ガバナンス
「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」といった気候変動への対応をマテリアリティの項目として設定し、気候変動課題に対する基本方針や対応策等の重要事項を取締役会で審議・決議しています。代表取締役社長は気候変動課題を含むサステナビリティ課題に対する最高責任者であり、代表取締役社長から任命された取締役が、サステナビリティ委員会の委員長として、全てのサステナビリティ施策を監督しています。2024年度より、執行役員を構成メンバーとする委員会体制に変更し、役員報酬制度との連動や執行責任者の協議による意思決定の迅速化を図ります。
更に、サステナビリティ委員会傘下に5つの環境関連タスクフォースを設置し、環境方針に沿った中長期環境戦略の立案や施策の実行を担います。サステナビリティ委員会は四半期ごとに開催され、意思決定が必要な案件は取締役会に上程されます。2023年度は、取締役会において、SBT認定取得に向けたGHG排出削減目標が承認され、削減推進組織が設置されました。更に、欧州バッテリー規則をはじめとした製品カーボンフットプリント開示義務化の流れを受け、製品カーボンフットプリント算定に向けた組織の設置も承認され、これらはタスクフォースの一部として活動していくことが決まりました。
サステナビリティ委員会にて、各タスクフォースをはじめとした活動の進捗状況は定期的に評価され、これにより、当社事業活動に伴う環境負荷を最小限に抑えつつ、持続可能な社会の実現に向けて着実に進んでいます。
当社における気候変動関連のガバナンス体制
会議名 | 役割 | 頻度 |
---|---|---|
取締役会 (議長:代表取締役 社長 泉 英男) |
気候変動を含むサステナビリティ方針の決定 気候変動を含むサステナビリティ重要課題の決定 気候変動対応の監督 |
年4回報告 適時課題審議 |
サステナビリティ委員会 (委員長:代表取締役 専務執行役員 小平 哲) |
気候変動を含むサステナビリティ課題の進行管理と 取締役会への提言 | 年4回報告 |
戦略
当社は、気候変動に関するシナリオ分析を実施し、その結果を基にリスクと機会を特定しました。これにより、当社の事業に与えるインパクトを内部的な基準に基づいて定量的に評価しました。
シナリオ分析
IPCC及びIEAの情報を基に、1.5℃及び4℃シナリオを用いて、2030年度の当社事業活動に影響するリスクと機会を特定し、事業インパクトの大きさから重要度を評価しました。リスクは移行リスクと物理リスクの側面から評価し、機会は製品、資源の効率性、市場、レジリエンスの側面から評価しています。
シナリオ分析は、以下の4つのステップに分けて実施しています。
- ステップ1:リスク重要度の評価
-
当社の事業活動に影響するリスクと機会を特定し、事業インパクトの⼤きさから重要度を評価しました。リスクは、移⾏リスク(政策と法規制、技術、市場、評判)と物理的リスク(急性、慢性)の側⾯から評価しました。
機会は、製品/サービス、資源の効率性、エネルギー源、市場、レジリエンスの側⾯から評価しています。 - ステップ2:シナリオ群の定義
-
IPCC及びIEAの情報を基に、物理シナリオ(RCP8.5、RCP2.6)及び移⾏シナリオ(STEPS、NZE)を選定し、4℃と1.5℃のシナリオ世界観における分析を⾏いました。2030年時点の4℃シナリオと2℃/1.5℃シナリオには気温上昇に⼤きな差異が⾒られないこと、事業視点で2050年時点の移⾏リスク、機会を予測することは困難であるため次の組み合わせに対して評価を⾏いました。
2030年 2050年 移行リスク 2℃/1.5℃シナリオ - 物理リスク - 4℃シナリオ 機会 2℃/1.5℃シナリオ - 出典:IPCC AR5 WGI SPM Fig. SPM.7(a)
- ステップ3:事業インパクト評価
-
移行/物理的リスク、機会を13の評価項⽬について、社内外の情報を⽤いた事業インパクトを評価しました。
具体的には、サステナビリティ推進室が選定した移行/物理的リスク、機会に関する評価項⽬に対し、各事業部が事業インパクトを検証、財務影響を試算しました。 - ステップ4:対応策の定義
- 特定したリスクと機会の財務影響度に鑑み、影響度が⼤きいものについては対応策の具体化に向けたアクションプランを策定・推進します。
分析結果
シナリオ分析の結果、1.5ºCシナリオの場合、2050年カーボンニュートラルに向けた施策が各国で推進されるとともに、サーキュラーエコノミー関連の規制が強まっていくことが想定されます。特に、当社の事業活動に影響が大きい 自動車業界では、EVやFCV(燃料電池自動車)といった低CO2排出製品の需要が増加し、環境負荷低減に向けた要求がより一層強まると想定されます。一方で、4ºCシナリ オの場合、慢性的な気温上昇により自然災害の頻発化・激甚化が世界的に広がり、自社工場のインフラ強靭化を目的とした投資や、サプライチェーン強靭化に向けた動きが業界を問わず加速していくと想定しています。
リスクと機会の評価
気候変動における当社グループのリスクと機会の評価結果は以下の通りです。
リスクは、移行リスク(政策と法規制、技術、市場、評判)と物理リスク(急性、慢性)の側面から評価しました。
リスクの種類 | 気候変動に関する分類 | 時間軸※ | 財務影響度 | リスク | 対応策 | |
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移⾏ | 新たな規制 | 炭素価格設定メカニズム | 中期 | 中 |
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スコープ1、2削減タスクフォースとしてGHG排出削減を加速します。 |
物理 | 急性 | サイクロンや洪⽔などの異常気象の重⼤度と頻度の増加 | 中期 | 小 |
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生産拠点の自然災害リスクに鑑み、生産移管や複数社購買の検討など、BCP対応の強化を行っています。 |
中期 | 小 |
|
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物理 | 慢性 | 平均気温の上昇 | 長期 | 中 |
|
再生可能エネルギー化計画において、電力使用量の増加予測分を省エネにより抑制するため、年率2%省エネ化推進をKPIとして設定しています。 |
※短期:1年以内、中期:3年以内、⻑期:3年以上(現在は2030年まで)
機会は、製品/サービス、資源の効率性、エネルギー源、市場、レジリエンスの側面から評価し、製品/サービス、資源の効率性を機会として特定しました。
機会の種類 | 気候変動に関する分類 | 時間軸※ | 財務影響度 | 機会 |
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製品/サービス | 研究開発と技術⾰新による新製品またはサービスの開発 | 中期 | 小 |
|
中期 | 中 |
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低排出材及びサービスの開発・拡張 | 中期 | 小 |
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資源の効率性 | より効率的な⽣産及び流通プロセスの利⽤ | 中期 | 小 |
|
より効率的な輸送モードの使⽤ | 中期 | 中 |
|
※短期:1年以内、中期:3年以内、⻑期:3年以上(現在は2030年まで)
リスクマネジメント
企業の持続的成長と企業価値向上を実現するためには、事業を取り巻く様々なリスクの影響度と重要度を見極め、中長期で施策を立案し、対応していくことが重要です。当社は、リスクに対する備えとしてリスクマップを作成し、気候変動関連リスクを経営上の重要なリスクとして設定しています。具体的には、年に1回、サステナビリティ推進室がリスク調査を行い、洗い出されたリスクはサステナビリティ委員会で評価・管理されます。財務影響度の大きいリスクは取締役会に報告、審議されています。国内外の事業所では、ISO14001認証を取得し、環境側面評価に基づき継続的に環境負荷低減に取り組んでいます。
指標と⽬標
当社は、2050年度までにバリューチェーン全体のGHG排出量実質ゼロを目指しています。2030年度のGHG排出量削減目標(スコープ1、2、3)はSBT認定を取得し、「RE100」に加盟して2030年度に再生可能エネルギー導入率100%達成を宣言しています。
- 2050年度目標
- バリューチェーン全体のGHG排出量ゼロ
- 2030年度目標
-
スコープ1+2削減目標:
GHG排出量を90%削減(基準年:2021年度)
スコープ3削減目標:
当社が購入した製品及びサービス、上流輸送・配送、販売した製品の使用による
GHG排出量を25%削減(基準年:2021年度)
RE100コミットメント:
使用する電力の再生可能エネルギー比率:100%