TCFD情報開示

TCFD提言への対応

当社は、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しています。気候変動関連リスクと機会の分析を行い、その結果を事業戦略につなげることで持続可能な成長及びリスクへの適切な対応を目指していきます。

TCFD

ガバナンス

「気候変動への適応と緩和」をマテリアリティの項目として設定し、気候変動課題に対する基本方針や対応策等の重要事項を取締役会で審議・決議しています。社長は気候変動対応を含むサステナビリティ課題に対する最高責任と権限を有しており、社長から任命された取締役がサステナビリティ委員会の委員長として、全てのサステナビリティ施策を監督する責任を負っています。2024年度のサステナビリティ委員会は、執行役員が参加する経営レベルの会議として実施しました。これにより、経営層による意思決定と役員間の連携をより密にし、重要課題に迅速かつ的確に対応できる体制としました。また、サステナビリティに係る課題に対して役員自らがリーダーシップを発揮して活動を推進することを目的とし、2024年6月よりESG評価に係る指標を役員報酬である譲渡制限付株式報酬の評価指標に追加しています。
サステナビリティ委員会は、各施策の進捗状況を定期的に確認するだけでなく、気候変動や資源循環等の重要課題について議論を行い、必要に応じて全社方針の決定を行っています。具体的には、スコープ3におけるGHG排出量について、当社1次サプライヤーの排出量が約6割を占めるという調査結果を共有した上で、スコープ3のGHG排出量削減の重要戦略として「製品設計段階での排出量削減」を設定しました。また、気候変動の機会について、EUタクソノミー適合性評価結果を共有し、サステナビリティ推進部門と技術本部が協力して、環境価値の創出に向けた活動を推進していくことを決定しました。なお、従前のマテリアリティである「脱炭素社会の実現」では、気候変動の緩和を最重要課題としていましたが、今後は一定程度の気候変動による異常気象を肯定し、気候変動に対して適応する取り組みも必要であると考え、新しいマテリアリティでは「気候変動の適応と緩和」と改めています。
また、サステナビリティ委員会で審議された環境に関連する施策・KPIは、取締役会に報告しています。

当社における気候変動関連のガバナンス体制

会議名 役割 頻度
取締役会
(議長:代表取締役 社長 泉 英男)
気候変動を含むサステナビリティ方針の決定
気候変動を含むサステナビリティ重要課題の決定
気候変動対応の監督
年4回報告
適時課題審議
サステナビリティ委員会
(委員長:代表取締役 専務執行役員 小平 哲)
気候変動を含むサステナビリティ重要課題への施策立案、実行
取締役会への進捗報告及び提言
年4回報告

戦略

当社は、気候変動に関するシナリオ分析を実施し、その結果を基にリスクと機会を特定しました。これにより、当社の事業に与えるインパクトを内部的な基準に基づいて定量的に評価しました。

1)シナリオ分析方法

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)及びIEA(International Energy Agency)の情報を基に、物理シナリオ(RCP8.5、RCP2.6)及び移行シナリオ(STEPS、NZE)を選定し、4℃と1.5℃のシナリオ世界観における分析を行いました。2030年時点の4℃シナリオと1.5℃シナリオには気温上昇に大きな差異が見られないこと、事業視点で2050年時点の移行リスク・機会を予測することは困難であるため次の組み合わせに対して評価を行いました。

2030年 2050年
移行リスク 2℃/1.5℃シナリオ -
物理リスク - 4℃シナリオ
機会 2℃/1.5℃シナリオ -

2)シナリオ分析結果

シナリオ分析の結果、4℃シナリオの場合、異常気象に伴う災害の激甚化に対して国内外の拠点への対策のみならず、サプライチェーン全体に範囲を広げたリスク対策の重要性を認識しています。一方、1.5℃シナリオの場合は、移行リスクを低減するために、脱炭素化に対する取り組みを継続的に推進するとともに、気候変動に適応する製品・サービス・市場における機会への積極的な対応が必要であると再確認しました。

3)リスクと機会の評価

リスクは、移行リスク(政策と法規制、技術、市場、評判)と物理リスク(急性、慢性)の側面から評価しました。

リスクの種類 気候変動に関する分類 リスク 時間軸※1 財務影響度※2 対応策
移⾏ 新たな規制 炭素価格設定メカニズム 2023年に欧州で試験導入が始まったCBAM※3は、現在、co2排出量が多い材料に限定されているが、今後、対象部材の拡大や各国への政策拡大が予想される。低co2部材を適用しない場合、追徴税の支払いが増加する。また、低co2部材を適用した場合は、原価率が悪化し収益に影響するリスクがある 長期 製品群ごとのホットスポット分析を行い、影響が大きい部材から順にco2排出量低減を推進
需要の変化 顧客行動の変化 企業レベルのGHG排出量調査から製品カーボンフットプリント調査に変化しつつあり、算定工数が増加するリスクがある 中期 製品カーボンフットプリント算定業務を組織的な活動とするための体制強化
自動車業界を中心に生産時のco2排出量削減が加速。低co2排出材への切り替えや設計が進まず、競争力が低下するリスクがある 中期 製品群ごとのホットスポット分析を行い、影響が大きい部材から順にCO2排出量低減を推進
物理 急性 サイクロンや洪⽔等の異常気象の重⼤度と頻度の増加 昨今の異常気象により、どの地域においても大型ハリケーンが直撃するリスクがある。大型ハリケーンが直撃した際のリスクは、河川氾濫による洪水リスクであり、当社生産工場だけでなく、サプライヤー生産工場も同様にリスクがある 中期 自社工場及び主要サプライヤー工場の洪水リスクマップの作成
慢性 平均気温の上昇 平均気温の上昇により、特に夏場において猛暑日が増え、疲労による生産性の低下や空調稼働率増加によりエネルギーコストが上昇するリスクがある 長期 空調設備のエネルギー消費量増加に伴う電力コスト増加を抑制するため、効率的な省エネ施策と、ポートフォリオ視点での再エネ調達戦略を実現するため、インターナルカーボンプライシング制度を導入

※1 短期:1年以内、中期:3年以内、⻑期:3年以上(現在は2030年まで)
※2 大:売上~10%、中:売上3%程度、小:売上0.5%~
※3 CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism):EUが導入した炭素国境調整措置

機会は、資源効率性、エネルギー源、製品とサービス、市場、レジリエンスの側面から評価しています。

機会の種類 気候変動に関する分類 機会 時間軸※1 財務影響度※2
製品/サービス 研究開発と技術⾰新による新製品またはサービスの開発
  • 気候変動に起因する異常気象が頻繁に発生するようになり、気候変動へ適応した経済活動にシフトしている。気候変動へ適応するには影響と効果を定量的に測定できなければならない。当社は各種センサー技術・製品を有しており、様々な市場に潜在的なニーズがあると予測できる
中期
  • 気候変動に起因する異常気象は河川洪水による災害リスクや降水量の減少による水ストレス地域の拡大等、水リスクが重要課題になる。当社は漏水センサーや水位センサー等水関連製品・技術を保有しており、これらの需要が増加することが予測できる
短期
低排出材及びサービスの開発・拡張
  • 環境負荷が高いメッキや塗装等に変わる新しい加飾技術(光加飾等)を用いた製品の提供によりビジネスが拡大
中期
資源の効率性 より効率的な⽣産及び流通プロセスの利⽤
  • 物流トラッカーの市場導入により効率的な流通に貢献
  • アナログメーターの市場導入により工場のIoT化に貢献
中期

※1 短期:1年以内、中期:3年以内、⻑期:3年以上(現在は2030年まで)
※2 大:売上~10%、中:売上3%程度、小:売上0.5%~

4)リスクマネジメント

企業業の持続的成長と企業価値向上を実現するためには、事業を取り巻く様々なリスク項目について、事業への影響度と重要度を見極めた上で、中長期で施策を立案、対応していくことが重要であると認識しています。当社は、リスクに対する備えを検討するためのフレームワークとしてリスクマップを作成しており、気候変動関連リスクは経営上のリスクとしてリスクマップに含まれています。具体的な活動としては、年に1回、担当部門がリスク調査を行い、洗い出されたリスクはサステナビリティ委員会で評価・管理しています。また、財務影響度の大きいリスクは取締役会に報告し審議されています。

指標と⽬標

当社は、2050年度までにバリューチェーン全体のGHG排出量実質ゼロを目指しています。中期目標として2030年度にGHG排出量削減目標(スコープ1、2)を2021年度比90%削減することを目指しており、2024年4月にSBT(ScienceBased Targets)認定を取得しました。また、「RE100」に加盟して2030年度に再生可能エネルギー導入率100%達成を宣言しています。
当社は、徹底した省エネ活動や積極的な再エネ利活用を推進することで、GHG排出量削減に貢献していきます。

2050年度目標
バリューチェーン全体のGHG排出量ゼロ
2030年度目標
スコープ1、2:
90%削減(基準年:2021年度)

スコープ3:
25%削減(2021年度比)

※排出量に占める割合が大きいカテゴリ1(購入した製品及びサービス)、カテゴリ4(上流輸送・配送)、カテゴリ11(販売した製品の使用)を対象

RE100コミットメント:
使用する電力の再生可能エネルギー比率:100%