リカロイ™

リカロイ™とは

リカロイ™は、アルプスアルパインが開発するオリジナルの金属磁性材料の名称です。特長は、「過冷却液体領域を持ったアモルファス素材」であることです。過冷却液体領域とは、凝固点で結晶化を始めないことをいい、通常よく目にする金属は、凝固点で結晶化を始め、室温では結晶化しています。結晶化とは、原子が規則正しく並んでいることを指します。 一方、過冷却液体領域を持つ金属は、凝固点で結晶化を始めない、すなわち、原子が規則正しく並ぼうとしない物質です。このように、室温下において、原子が規則正しく並んでいない物質の状態を「アモルファス」と呼び、リカロイ™は、アモルファス合金のひとつです。
リカロイ™の名前は、こうした物質特性が加味されています。アモルファス状の物質。 すなわち、原子が規則正しく並んでいない物質である液体のLiquid(リキッド)と合金のAlloy(アロイ)を合わせ、リカロイ™という名前が誕生しました。
アモルファス合金であるリカロイ™は大きく4つの特性を持っています。1)低鉄損であること 2)飽和磁束密度が高いこと 3)粉末化が容易であること 4)高温下でも特性が安定していること

1)低鉄損(コアロスが少ない)

鉄損とは、磁性素材を鉄芯とし、コイルを巻きつけ電気を流し、その鉄芯を磁化させた時に失われる電気エネルギーのことです。低鉄損とは、磁化させた時に失われるエネルギーが少なく、効率的な磁化、すなわち電力の効率的な使用ができることを意味します。 図1は、リカロイ™をはじめとしたさまざまなコア材を100kHzの周波数帯でコアロスを比較したものです。 リカロイ™は、他の素材に比べ、コアロスが少ないことが分かります。

図1: 高周波スイッチングにおいて極めて低損失

2)飽和磁束密度が高い

リカロイ™の二つ目の特長として、飽和磁束密度が高いことがあります。飽和磁束密度とは、磁性体に外部磁界を加え、磁化をほぼしなくなった時(飽和磁化)の磁束密度のことを指し、この密度が高いほど強力な磁心であることを意味します。
そして、飽和磁束密度が高いコア材は、大電流領域(10A~20A程度)、すなわち強い磁界の発生する所で使用することが可能になります。仮に、飽和磁束密度の低いコア材を大電流領域で使用すると、インダクタンス値が下がり、セット機器で設定された昇圧・降圧ができなくなります。
これまで、こうした課題は、コアを大型化することで対応してきました。これに対して、リカロイ™は飽和磁束密度が高いため、大電流領域でも使用できる小型のコアをつくることができます。

下の表では、各種コア材の飽和磁束密度とコアロスの値を示しています。ここからも、リカロイ™が、コア材としてバランスの良い素材であることが見て取れます。

飽和磁束密度 Bs(T) コアロス
(kW/m³@100kHz-100mT)
リカロイ™ 1.1 200~400
Fe-Ni (ハイフラックス) 1.35 550~1100
FeAlSi(センダスト) 0.95 600~1000
MnZn(フェライト) 0.35~0.5 100~

表1: コア材の飽和磁束密度とコアロス

3)粉末化が容易

また、リカロイ™は、粉末化がしやすい磁性素材です。粉末化が容易であることは、加工のしやすさを意味し、押し固めることで、様々な形状のコアをつくることが可能です。

4)高温下でも特性が安定

リカロイ™は、200度という高温下でもその特性が安定しています(図2)。 この特長により、車など厳しい環境でも使用が期待されます。

図2: 低温から高温まで安定した特性を維持

上記のような特長を生かすことで、リカロイ™は、様々な用途のインダクタに変身します。アルプスアルパインではリカロイ™を適用してパワーインダクター(PWI)製品を提供しております。

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